2014年7月14日月曜日

英語のエルサと日本語のエルサは性格が違う!? - 'Let It Go'と『ありのままで』

春の劇場公開から最近のDVD & Bluray発売まで、
ずいぶん長い間話題にのぼっているディズニー映画、『アナ雪』。

かなりテレビでも特集されているので、英語版のタイトル
'Frozen'が日本人に馴染みやすいように『アナと雪の女王』に変更されたことや、
英語版'Let It Go'の口の動きに合わせて日本語版『ありのままで』の
歌詞が決められたことなど、既にご存じの方も多いのではないでしょうか。

私もゴールデンウィークに映画館で観てきました。
英語版と日本語版、どちらを観ようかなと迷いましたが、
Youtubeで'Let It Go'と『ありのままで』を聴き比べて、日本語版を観ることに決定!

歌が重要なミュージカル映画、通常であれば私は迷わず英語版を観ます。
それでも今回日本語版に決めたのは、日本語版の歌詞の完成度の高さ!
これは今まで観たことがないくらいの衝撃!

それは、なぜでしょうか?今までの映画とは何が違うのか、考えてみましょう。

通常、映画などの日本語版はいわゆる「翻訳」。
英語版の歌詞の意味を日本語に訳している感じが強いです。
だから、「言いたいことはわかるんだけど、イマイチ心にストンと入ってこない」
感じることが多かったのです。日本語というか、「翻訳語」

「今回もそうなのかなー、有名俳優さんたちが吹き替えしているから、
そういう話題性で日本語版がプッシュされているのかなー」と思っていた私。

しかし、Youtubeで日本語版『ありのままで』を聴いたとき、
拍手をしてしまうくらい「素晴らしい!!!」と感じました。

それは、日本語版の歌詞が翻訳にとどまらず、
ちゃんと日本語だけで一つの世界を構築していたからなのです!

平たく言うと、日本語版『ありのままで』は英語版'Let It Go'の英訳ではありません。
実は、英語版とは結構違うことを歌っています。
私の中で、英語版'Let It Go'を歌っているElsaと、日本語版『ありのままで』を
歌っているエルサの(性格的な)印象が全然違うと感じるくらいいに。

いわば、日本語版は「エルサが日本人だったら、こういう状況のときには
こう歌うだろうな~」という感じ。

例えば、私が一番感動した場面。
エルサが束ねていた髪を勢いよくほどきながら歌う躍動感あふれるシーン。
日本語エルサは、こう歌います。

「これでいいの 自分を好きになって  これでいいの 自分信じて」

このシーンで、英語版エルサはこう歌っています。

'Let it go, let it go 
and I'll rise like the break of dawn
Let it go, let it go
The perfect girl is gone'

これを日本語にするとこんなニュアンスです。

「解き放つの、知れたっていいわ
私は立ち上がるの 夜が明けるように
解き放つの 隠さずに
もう『いい子』はやめたの」

だいぶ違いますよね?「自分を好きになる」とか、そういうことは一切言っていないです。

そもそも'Let it go'という英語の表現は、「手を放したら出て行ってしまうものから
手を放して、行かせる」みたいなニュアンスの表現。
例えば、失恋の歌なんかでよくある'I don't want to let you go'というのは、
「もう行ってしまうのは分かっている君を、行かせたくない」というニュアンスです。
自分が手を離せば、もう行ってしまう。そんな感じ。

それを踏まえて、この歌詞を考えてみましょう。
エルサは自分が生まれ持った力を周りの大人から「隠しなさい、見せてはだめ」と
言われ続けて育ってきたわけです。つまり、自然な状態に逆らってきたのです。

周りに気付かれまいと自分の力をずっと必死に隠してきたエルサが、
隠し持っていた秘密から手を放して'Let it go'するという場面の歌なんですね。
そして頑なな心や、皆と同じでないという悲しみや寂しさ、そんなものも一緒に手放してしまう!

そんな爽快感が英語版にはあります。
そして、小さな部屋でうずくまっていた自分を捨てて立ち上がる!という力強さもありますね。


一方、日本語版。
「これでいいの 自分を好きになって これでいいの 自分信じて」はどこから来たのでしょうか?

これはあくまで私が感じたことですが、日本語版チームは
「本当の自分を抑えつけて生きてきたエルサなら、ここで何て言うか?」という
ことから考え直されたのではないかと。

「本当の自分を隠して生きざるをえなかった、それに人生のエネルギーを使ってきたエルサ」
=「本当の自分を認めてもらえないのが苦しい、自分を好きになれない、自信が持てない」
→「これでいいの 自分を好きになって これでいいの 自分信じて」

このようにエルサの気持ちを日本語で考えて、この歌詞が生まれたのではないかと。
いかがでしょうか?英語版からは「バーン!どうだ!」という強さを、
日本語版からは「胸に秘めた自信と凛とした静かな強さ」を感じませんか?

この歌が世代を問わずあらゆる人に愛されるのは、英語圏の人の完成を
日本語に訳したのではなく、ある意味「日本人らしい、日本語らしい感性」で書かれているから
だと私は思っています。何とも見事な「気持ちのローカライズ」!さすがディズニー!
(だから英語版のElsaと日本語版のエルサは違う人みたいに感じるわけです、いい意味で)

次回は英語版'Let It Go'を英語版Elsaの気持ちで歌いたくなった方のために、
歌詞の和訳をしてみたいと思います!


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